日本古来の工芸品である漆器を手にした時、誰にとっても驚きなのがその芸術的な質感と緻密な完成度です。今回のプロジェクトでは、モダンな意匠と感覚的な要素を持つ現代的作品を通して、漆器のこの優れた製作技術を表現することを目指しました。。
シリーズ「Japan Lacquer Design」のどの作品も、基本造形には球、立方体、円柱など純粋な幾何学形状を持っています。そこに形状の足し算(組合せ)や引き算、そして掛け算(繰り返し)などが施され、それぞれが新たな機能的価値を持ったり、驚きのある全く新種のものに生まれ変わったりしました。
例えばstacking trayのシリーズは、単体ではもちろん普通の器としての機能を持ちます。それがお互いに重ね合わせられた時には一転して全く別の造形が生まれ、それが一つの大きな器として機能したりあるいは象徴的なオブジェクトになったりする訳です。plateのシリーズは、実は上面には凹みが無く全くの平面です。通常の器の形状をもつ外側のシルエットのみがこれが器であることを想起させているのです。またtray tableは同一形状の天板を2重に持っているので、上の天板をはずしてトレイとして使うことができます。
作品を実際に手にすれば、誰もがこの隠れた機能や仕掛けを体験することができます。そしてこれは同時に、完璧で正確な仕上がりを可能にした漆器職人の並外れた技能の証でもある訳です。
このような最高の完成度での製作には大変な手間と製作工程が費やされています。何よりも効率や速さが優先される今日の社会の中で、逆に時代や年代を超越た計り得ない価値を持つ「Japan Lacquer Design」シリーズを発表できることをとても誇りに思っています。
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